イスラエルとシリコンバレー①
- 2010年04月10日
- Interview
加藤: 例えば、5 人で3 年間研究開発をするようなスタートアップの会社を日本で作る場合、日本だと、数億円とかいうお金は VC から入らないじゃないですか。
イスラエルですと、500 万ドル~ 1000 万ドル( 5~10 億円)の資金が、初期で入る。投資に対する国の考え方を反映しているというか。
春田:Discretix 社も日本の会社に比べて多くの資金を集めていますからね。数社の VC から集めています。トータルで、数十億円の資金。それぞれ VC からは数億円単位でお金を集めていますね。
※ Discretix 社公開情報によると、ACCEL Partners、SEQUOIA Capital、Pitango、Genesis PARTNERS、Poalim Ventures、Shrem Fudim Group、Eurocom から資金を集めている。
※ Discretix 社の設立は、2000 年。
加藤:数十億円あれば、10~20 人程度のチームを作って、2~3 年研究開発へ注力するために十分ですよね。
春田:売り込み自体は、CEO の GalSalomon 氏 が、多分開発をしながら、行っていたようです。最初のお客さんからキャッシュが入ってきたのが、会社を設立して 2 年半ぐらいの時期ですからね。
加藤:売上が、2~3 年ゼロだとしても、それだけの資金をファンドから集めていたということですよね。日本の会社ですと、それは非現実的な話ですね。(笑)
春田:それと、起業する人のレベルが高い、という言い方が適切かわかりませんが、経験値はやはり高い。いわゆる、スピンアウト・スピンオフした会社が多い。Discretix 社も、Intel 社と DSP コミュニケーション社 にいた Gal Salomon 氏が設立した会社。
実際それまでに、プロダクトマネージャーやエンジニアリング的な点も社長自身がやっていたので、業界の事を知っていたり、前の会社で日本の顧客とも付き合っていたり、製品開発の事もわかっている。
会社設立当初コアのメンバーは、イスラエルでもセキュリティの第一人者ではないですけど、エキスパートが揃っていて、Intel 社や大手など、プロマネだったり、ハードの設計をやっていたり、それなりのポジションにいた人たち、ある程度説得力のある人が来ているので、スタート地点でアイデアだけでやる会社と格が違う。
※ 現在も Discretix 社の取締役会とマネジメントには、各 VC 、その分野の専門家が名を連ねる。
一方、多分、シリコンバレーは、シンデレラストーリー的というか、スタンフォードの学生が 1~2 人が、アイデアだけで始めたとかそういうイメージがありますね。FaceBook、Google、MicroSoftとか…。
ただ、私が見るイスラエルのイメージは、大学発の学生ベンチャーではなくて、エスタブリッシュされた会社で、1 キャリア、2 キャリア経験を積んだ人たちが、集まり、7~8 人のチームを組んで、「えい、やー!」で始めるイメージが強い。会社設立時に、起業する分野のノウハウも持っているので、馬力が違うし、スピードも違う。 そもそも、自分達の持っているコアの部分をフォーカスしてやっているので、シリコンバレーのようにインターネット上で「こんな事やったらあたるかな、あんな事やったらあたるかな」 と試行錯誤でサービスを立ち上げてみるというのとは、違いますね。そういう会社もイスラエルにはもちろんあるでしょうが…。
それと比べ、Discretix 社は、ある程度経験値が高い人が始めていますからね。シリコンバレーの若手スタートアップとは、意味合いが違いますね。イスラエルの他の会社は、あまり多くは知りませんが、そういう会社が多い気がします。