イスラエルとシリコンバレー②
- 2010年04月10日
- Interview
加藤:イスラエルの会社を 4 年ほど調べていますけど、シリコンバレー的なアイデアだけではじめる会社は、少ない感じがしますね。イスラエルからグローバルに広がった Web サービスって、全て調べきれてはいないですけど、恐らく、ないイメージが強いですから。
イスラエルで会社を作る場合は、やはり、5 年、10 年先を見据えて、ある程度の市場規
模があり、こういう領域でビジネスをしたい、そこから逆算して、マネジメントチームを組んでいるようなイメージがありますね。
春田:思いつきで、ビジネスモデルが浮かんだとか、技術が浮かんだからといって起業するのではないので、その道で、無線技術なら無線技術で何年かやっていましたとか、セキュリティなら、セキュリティのある分野で何年かやっていましたとか。
技術者としてやっていて、それで、特定分野を今の会社から切り離してもビジネスになりそうだ、という根拠があって、やっているイメージがありますね。
ただ、「それでも IPO できるとか、潰れずに行く会社ばかりか?」 といったら、とてもそんなことはなく、淘汰されますからね。成功確率でいったら、シリコンバレー的にタケノコのようにボンボン出てきて「何でも試してみる」というのと、イスラエルで経験値がある人を集めて成功する場合とは、確率でいうと、あまり変わらないかもしれないですね。
どうなんでしょうね?
加藤:そうですね。
結構消えていく会社は多いかと。イスラエルの会社とかを、時系列で調べていますが、「あの会社どうなったのかなぁ」と時間をおいて調べようとすると、会社の Web ページにアクセスできなかったり、以前聞いた連絡先にメールしても送信できなかったりとか、結構ありますよ。(笑)
確率でいったら、2 割が 3 割ぐらいになるレベルで、6~7 割になるわけではない。
春田:経験値がある人、すごい人、ある分野のエキスパートがやっているから成功確率が高いのか? といったら、そんなことはないですからね。
加藤:マーケットのニーズをうまく汲んで、開発した製品を市場へ供給できれば、市場での地位を獲得でき、売上を作っていける。
春田:いくら技術がすごくても、技術だけでは難しく、ニーズがなかったり、お客さんへ受け入れなかったりしますからね。
加藤:ところで、原丈人さんってご存知ですか?
スタンフォード大学で考古学の研究を元々やっていた方で、現在は、デフタ・パートナーズという VC を、米国、イスラエル、日本を拠点にもってやっている方でして、2005 年に Intel 社と合併した Oplus 社へ投資した時の話が興味深くて…、3~4 年前、イスラエル大使館経済部の講演でお聞きした時の記憶ですが、通常のCPU の方式とは違う技術を開発している Oplus 社へそもそも投資したキッカケが、技術のプロトタイプとかは何もなくて、とにかく理論がすごかったという理由だけらしく…。
春田:良さをなかなか分かってもらえない。(笑)
本当に、数字だけで、「いつまでにどのぐらいのリターンがありますか。」という視点でしか判断されないでしょうからね。金融系出身人たちは、わからないから、リスクテイクもしにくくなる。
イスラエルですと、技術を見れば、最初にキャッシュがある程度入る余地がある。技術がコアで行けると判断されれば、投資する人がいるでしょうからね。
加藤:ただ、イスラエルでは、投資判断は、そういうこともあり、日本以上に相当厳しいとか…。
春田:スタートアップが出るか出ないかという、土壌は違いますね。日本だと、どうしてもピュアなスタートアップってなくて…。
加藤:ピュアは…、ないですねぇ。(笑)
春田:小さい個人事業的なスタートアップはありますけど、コアの技術や将来のインフラになりうる技術を持っていて、かつ、資金調達をしている会社は少ないですよね。
加藤:探すのが難しいですかね。
春田:逆に、イスラエルは、大学のお金に頼るわけでもなくて、手弁当的な自己資金でやっていると思うので。イスラエルは考え方がしたたかですよね。
そこは、間違いなくあると思いますね。