注目のイスラエル企業③
- 2010年06月15日
- Interview
加藤:現在、イスラエルの会社で注目している会社はありますか?
江副:えー、いくつかあります。(笑)
1つは、GO-NET という会社です。フェーズドアレイの無線LANの基地局の会社。実は、法律の壁があるから無理だと思っていましたが、クリアできまして。
今までの11 b / gの無線LANアクセスポイントで、1キロぐらい先までカバーします。今までの100メートルぐらいの距離が、突然、1キロに変わることで、使われ方が大きく変わる1つのイノベーションが起こせるのではないかと思っています。
技術の中身を精査していくと、実によく考えられている。これは、昨日今日考えたレベルでサクッと作ることはできないという蓄積がありますね。
フェーズドアレイ(フェーズドアレイレーダー)の技術は、元々軍事技術ですので、軍事レーダーを開発していた人たちが、ネットワーク通信技術を知りつくして、開発しないと動かない技術でしょう。その点が、じつにうまく集約されていて、今後、伸びると思います。
元々、無線系をやっていたということもありますけど、それはさておき、いいですね。(笑)
加藤:太鼓判ですね。
江副:今、無線LANが、搭載されていない端末はないじゃないですか。
インフラとして一番標準的になっているので、小さい基地局を、あちこちへ何個も置かなきゃいけない、問題はあって、そのせいで、チャネルが混むという問題があった。
ただ、そのぐらい広いカバレージを打てる基地局が出でしたら、その辺にポコポコ、家庭内に基地局を置く意味がなくなって、基地局経由で、VLAN組んでとか、いろんな仕組みができてくる…。
少し突っ走ってしまった技術ですね。
加藤:いつぐらいに見られそうですか?
江副:2010年度中には、ちらほら見られるでしょう。技術自体はすでに出来上がっていて、欧州では、かなり普及させています。米国ラスベガスの街も、彼らの技術でカバーしてしまっていますからね。実績を蓄積した上で、日本へ来ています。
脅威ですよね、私自身が他のアクセスポイントの会社をやっていなくてよかったなと思いましたから。テクノロジーって一気にひっくり返されてしまいますよね。
本来は、11 n とか、プロトコルの勝負へ行く方向もあるかもしれない。ただ、それを普及させるためには、クライアントデバイスが追いつかないと厳しいわけで、普及済みの今のプロトコルが、驚異的なカバレッジを置き換えるだけでやってしまうと、結構ショックなことでしょう。
「WiMAXって、一体何なの?」っていうことに、なりかねない…。
加藤:今、私も同じことを思っていました…。
江副:「デバイスを買い換えなければならない。」と言った途端に、大きな壁がある訳で…。
加藤:日本のユーザーは、サービスを変えるだけでも、ものすごく手間だと思うのに…、デバイスも変わり、サービスも変わり、ということになると…。
江副:しかも、料金も高くて…。
アップリンクの速度が出ないじゃないですか。今、WiMAXなども、ダウンリンク主体で考えていますよね。今って、「ダウンリンク主体ですか?」というとそうでもなくて、アップリンク、かなりかけていますよね。
加藤:双方向で。
江副:P to P のアプリケーションが普通になって、有機的にネットワークが動く時代で、一昔前のクライアントサーバーモデルというのは、崩壊している時代、何をいまさらダウンリンクに特化させたものに、なってしまったのかなぁと。
加藤:2009年、イスラエルへ行った際 Greenair Wireless という FMC 技術を持った会社です。現在、携帯電話の通信は、無線基地局経由ですけど、その会社の技術は携帯電話の通信のアップリンクを一部有線化する技術です。数メートル~数十メートルは、自宅のある場所までは無線で飛ばす。
江副:なるほど、電波帯を混まさずに、すみますね。
そういう技術を聞くと、ラストは、無線LANは結構有効じゃないかと…。今さら対抗する無線システムを持ってきて、といっても、持って来にくいぐらい普及していますよね。
加藤:今のデバイス上で、ある程度は動かないと…。機器を全部変えてとなると…ハードルがとてつもなく高い。
江副:これだけ、無線の世界でガラパゴス化と言われている日本が、これだけ普及させてしまっているものを変える事は、なおさら、難しい。
そう考えると、無線LAN中心になっていく気がしてならなくて、その中で、GO-NETの技術のように1キロのカバレッジだと、随分、利用方法が広がるので、一気に普及していくのではないかと。