EXIT が生む VC 離れ | Isratech / イスラテック

EXIT が生む VC 離れ



EXIT が生む VC 離れ

エコシステムでは、前著で主に触れていますので、今回は要点のみをご紹介することはご容赦いただきたい。イスラエルの近年の傾向として、アクセラレータの勃興、VC 離れなどが目に見える変化として起こっています。

1 つ目のアクセラレータは、スタートアップと関わる「数」そのものを増やす戦略であり、2010 年以前はその言葉すら存在しなかったが、今では当たり前で行われています。10 年経つと時代の流れに伴い、その「手法」自体に変化が生まれます。2030 年ごろには、今の私たちが想像しないような、手法が登場しているでしょう。

もう 1 つは、Exit が年間 100 件程度 起こることが興すスタートアップエコシステムで顕著な VC 離れが起こっています。イスラエルでは、年間 100 社程度の Exit が生まれます。仮にその Exit により、 1 社 3 人程度エンジェルが生まれると単純計算します。毎年 100 社程度の企業が、イグジットされていくので、毎年 100 – 300 人程度の投資家が生まれる計算になります。10 年経過すれば、1000 – 3000 人程度投資家予備軍(シリアルアントレプナー)が生まれています。彼らがもう一度起業するのか、買収された企業に入り続けるか、いくつかの選択肢があります。

VC 離れは、どこに起こっているのか。例えば、年間 100 件のイグジットが起こる中で、20 m$( 20 億円程度)以下の買収で VC のサポートを受けない案件の比率が高いです。20 m$( 20 億円)以下の全体のイグジット件数と、VC が支援していないイグジット件数を列挙していくと以下のようになります
●2014 – 2018 年の 20 m$ 以下の Exit で VC が支援していない件数

  • 2014 年は、全体 71 件中、48 件は支援を受けず( 68 %)
  • 2015 年は、全体 70 件中、52 件は支援を受けず( 74 %)
  • 2016 年は、全体 85 件中、60 件は支援を受けず( 70 %)
  • 2017 年は、全体 84 件中、56 件は支援を受けず( 67 %)
  • 2018 年は、全体 59 件中、36 件は支援を受けず( 61 %)

この 5 年を平均すると、7 割程度は、VC の支援を受けていないことになります。
2014 – 2018 年 5 年間で見ると、20 m$以下の案件は合計 369 件イグジットは存在します。その中で 252 件は、VC の支援を受けていない案件であり、68 %と、約 7 割に達します。2014 – 2018 年 5 年間の合計は、616 件で、この中でも、4 割以上は、すでに VC に支援を受けていない案件です。

こうした実態は、肌感覚で何となく分かっても、詳細を知っておきたい事実です。「 VC への出資だけで情報収集ができる」と出資を考えている日本企業があるとすれば、考え方を変える時期に来ているでしょう。エコシステムの全体傾向は、定点観測していないと掴みにくく、なぜ起こっているかを著者なりに考えてみると、

  • 「イノベーションサイクルが速くなったことで、スタートアップが大きくなりきる前に買収が起こる」
  • 「毎年生まれるエンジェルが VC に代わり、VC が投資できないようなところのリスクを負い始めている」

などがあろうか。一昔前の「常識」では、VC のスタートアップに投資を受けていないスタートアップに投資するなんて、博打すぎる、そもそもそんな案件に投資しないという常識でした。2020 年代では、VC が入れてきていない案件(あくまで Exit の中での案件です )が、全体でも案件の 4 割程度まで占め、20 m$以下の買収案件に至っては、約 7 割に達しています。

VCに投資を受けていないスタートアップにも目を光らせる必要がある」という新たな常識が、事実として登場しています。これは「スタートアップとどう関わるかか」というイノベーション戦略そのものを変えることにつながって来ますし、「その中でリスクをどうとるのか」「良い案件にどうたどり着いていけばいいのか」という知恵を絞る必要があるでしょう。

コロナ禍で 2020 年は、イグジットの傾向がこれまでと違い、22 件と漸増傾向です。最終的な 2020 年の数値が出そろってみないと判断できませんが、コロナ禍の影響を受け IPO 寄りになり始めている「兆し」も出てきている点は、付け加えておきます。今後も注視を続けて参ります。

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