[スタートアップ紹介Vol.50]NanoScent & コロナ渦スタートアップ概況
イスラテックインターンが、臭気による異常検出を測定することができる技術を開発している「 NanoScent 」について、代表加藤に伺います。
NanoScent とは、そもそも、どんな会社でしょうか?
同社の Nanoscent は、電子機器に「匂いの感覚」を持たせるチップを開発しました。ケミレジスタを搭載した臭気検知デバイスとデジタル技術を融合したさまざまな新型センサーの開発と活用をしており、現在ではこの技術を利用して COVID-19 を特定する試験をシェバ医療センターで開始しています。
見えない臭いをどのようにデジタル化して管理しているのでしょうか?
同社のセンサーは、臭気パターンによる電気電動性の変化を利用して臭気の種類を確認しています。この技術を利用して、呼気からウイルス感染を検出できる迅速な診断センサーの開発に着手しました。
たとえば、コロナウイルスの検査方法としては、小さな袋に息を吹き込み、そこにチェックデバイスを差し込みます。30 秒以内にセンサーが陽性または陰性の値を表示するといった感じです。
デバイスに基づく非侵襲的かつ即時に結果を生み出すことができる非常にシンプルな診断方法と、PCR などによる精度の高い検査方法を組み合わせることにより、迅速、低コスト、高精度の感染スクリーニングシステムを作成することを目指しています。
さらに同社はソフトウェアおよび AI を活用して、テスト結果をより正確に検出する技術も開発しています。
なるほど、臭気デバイスと聞くと工場や都市部の環境汚染状況などのモニタリングに有効だと考えますが、ウイルス検出などにも活用できるのですね。
また、臭気デバイスを個人のウイルス検出にも活用できるというイメージがなくて驚きましたが、それ以外にもパーソナルな活用方法というのはあるのでしょうか?
同社の技術の用途はほとんど無限です。たとえば、妊娠可能性や妊娠の検出、栄養の分析、体臭に応じてシャワーを浴びる時間をスマートフォンを介してユーザーに通知するなど様々あります。あと、恋人を見つけることに活用できる点が非常にユニークですね。
フェロモン認識に基づくカップルマッチングシステムのようですが、個人は特定の匂いの人々に自然に惹きつけらる傾向があるようで、これらの特定の匂いを探知するシステムと香りのプロファイリングにより理想的なパートナーを見つけ、結びつけることができるそうです。
はい、これは匂い、臭いに限らず、人間の五感が感知できる範囲は限られているので、有臭、無臭両方あるため、応用範囲は広いと思います。
想像していたより遥かに凄い技術でした。ウイルス検知への活用に期待が高まるところですが、マッチングシステムも今後需要がありそうな機能でとても期待ができますね。
このインタビューも 50 回になり、少しお聞きしたいことがあるのですが構わないですか?
2 つほどお聞きしたいことがございます。
1 つ目は、今のイスラエルのスタートアップの状況はどうなっているのでしょうか?投資、設立企業数、イスラエルの特徴的な企業の買収数などを、かいつまんで教えていただけると助かります。
まず、投資に関して、2020 年の 1-6 月期でいうと、
〇スタートアップへの投資総額 ※ 2020 年 1-6 月 38.3 億ドル
(前年同期比 : 2019 年前半比較:7.5 %増加 )
(前々年同期比 : 2018 年前半比較:13.3 %増加 )
とさほど、落ちていません。むしろ伸びています。
ただ、ラウンド数(いわゆる投資数は落ちています、その中、大型調達は増えています。)は減っています。
一部ニュース等では、コロナ渦でも投資好調のように数字を報じてますが、数字を分解し、現地事情を確認すると、芳しくなく、ラウンド数の減少は、リアルコミュニケーションの減少、新規投資家の参入の減少です。
今後、7 月以降の減少が危惧されています。現地 VC 、専門家のコメントを見ると否定的な見解が多数です。
なかなか、数値だけで見てはだめなのですね。投資額が増えているのに否定的な見解が多い理由はなぜでしょうか?
また、スタートアップの設立企業数や、Exit 数はどうなのでしょうか?
1 つ目の質問の大きな理由は、『コミュニケーションの質、量』の減少が原因でしょう。併せて、新規投資家が非常に入ってきにくい状況にあります。投資が一時期増えている理由は、既存投資先へのフォロー投資(しかも大型)が主で、確かに、金額だけを見れば、金額自体は増えています。
ただ、新規はすべて見ていないのでわかりませんが、恐らくかなり減っていると思います。一方で、2020 年に入ってからの新設企業数は、コロナ以後それほど減っていません。年間 1000 社設立される企業といわれる中で、弊社独自調べですが、毎月 80-90 社のペースを保っております。
一方で、Exitの方の減少は、顕著で
〇スタートアップの Exit ※ 2020 年 1-6 月
52 の Exit 数、総額 約 58 億ドル。
(Exit 数 前年同期比 : 2019 年前半比較:32 %減少 )
(総額 前年同期比 : 2019 年前半比較:22 %減少 )
2019 年の前半では 77 の Exit があり、合計で約 75 億ドル
イスラエルの Exit は、M&A 9 割以上。
数が減っているのは、グローバルなプレーヤーが現地に入ってコミュニケーションができないことが、大きく影響しているのではないかと推測しています。(ヒアリングも何社かしております。)
となると、今週末(9/18)から感染拡大に伴い、再びロックダウンが3週間とのことで、影響は出てくるのでしょうか?
イスラエルは、海外投資比率が 7 割を超え、Exit によりスタートアップのエコシステムが好循環で回っているのが特徴で、この資金が入ってこなくなる、この Exit の数自体が減るということは、どうにも避けられそうにありません。スタートアップの創設数自体は変わっていないのですが、Exit スピード、資金調達の鈍化により、いわゆる全体のサイクルスピードが遅くなると思います。
彼らがイノベーションを興し続ける民族であることは間違いないのですが…。
一刻も早い状況の通常回復が待ち望まれますね。逆にコミュニケーションの質自体を高められれば、チャンスということですね。本日は少し長くなりましたが、ありがとうございました。
※イスラエルでは、こうしたスタートアップが 6000 社以上存在するといわれております。
弊社では、こうした企業の調査、目利きを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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