イスラエルとシリコンバレー③
- 2010年06月15日
- Interview
加藤:イスラエルは、中東のシリコンバレーといわれる、人材、投資の面とか、また、Oracle社、Intel社などに代表される、いわゆるグローバルに活動するテクノロジー企業のとあり、そういった会社は、自社で投資部門を抱えている会社もあるじゃないですか。「イスラエルとシリコンバレーの違い」何かございますか。
江副:私は、シリコンバレーの方をそんなに詳しくありません。イスラエル経由でシリコンバレーへ行った人間ですけど、違うことは、やっぱり、国を挙げてサポートしていることが多い気がします。
たとえば、ハイファ。
ある一区画の中に世界のそうそうたる大企業のR&Dが、歩いて2 ~ 3分の所に全部集めているでしょ。イスラエル政府が国の施策として、ああいうことを、やられてしまった日には、どうにもできない。一方、シリコンバレーは、政府とは関係なく、自然発生的にできていきましたよね。ですから、管理のされ方が違うというか。
それと、政府が個人で起業させるための支援策がありますよね。だから、シリコンバレーで起業するときは、若い人が起業すると、投資する会社に騙されてしまった…。投資会社に会社のハンドルを握られて、いいようにやられてしまったというか。IPOまではいったけど、起業した本人たちは、全然儲からなくて、すってんてんになってしまった、というのも時々聞きますからね。
加藤:初期投資を受ける際、マネジメントから外されたり…。
江副:一方で、イスラエルは、最初のスタートアップの時、政府が資金援助をしているケースが多く、それ以後ファンドがでてきても、最初の1st ファンドは政府と自分自身なので、いい目を見やすい。
加藤:会社の設立当初、Founder(=創業者)、CEO であった人も、大きいVCが入ってきた後でも、CTOとかでポジションとかが残りますよね。
江副:イスラエルの起業家は、割に合わない状況にならずに、すんでいるっぽい。
だから、後に続く人が多い。みんな、「俺こそは」と思う。あれは、いい傾向ですよ。正にスタートアップの状態、個人でアイデアがあって、特許も取り、企業にしたいですという時、政府がある審査基準を持って、ちゃんと審査して、結構な額入れますよね。
2億とか、4億とか入れますよね?
加藤:えー、300万ドルとか500万ドルとか、数億円単位がポーンと入ります。
江副:「結局何でそんな額入れるの?」ということになる。
その答えは明快で、「イスラエルの中で勝負するのではなくて、あなたたち海外へ出て行って勝負するんでしょ?」というスタンスの投資ですよね。そういう額。リターンも大きい。日本で起業する人は、怒られてしまうかもしれませんけど、何か知らないけど、日本の中で商売しようとする人が多い。
世界企業になろうと思って頑張っていく人は、結構少なくて…。成功するタイプは、ガラパゴスマーケットの中だけ。世界企業に育っていく日本のベンチャー企業って、本当に少ない。
その感覚って、最初の会社をスタートする段階で、「海外へ出ていこう」と志を持ってスタートしていない会社も多いし、そもそもそれだけの資金調達ができないから、どうにもならないということが、あるかもしれない。
たとえば、IT系コンシューマ相手のサービスを、日本向けにやってしまうと、日本だけですよね。某企業、某企業…、いっぱい出てきますけど…。海外進出を、今ぐらいからやろうとしていて、何かうまくいかない…。
加藤:一時期シリコンバレーにも何社か行っていましたよね。
江副:戻ってきて、またやってというのを、繰り返していますよね。海外で成功した!と、なりにくいですよね…。
加藤:やっぱり、基幹系の技術を持っている会社の方が、そういう点では有利ですか?
江副:というよりも、単に、最初に日本で儲けて、食っていける体制だけ作って、そこで小さくまとまってしまっている、感じでしょうか?ただ、どう見ても、日本は世界の市場の10%もないわけで、滅茶苦茶ニッチ市場な訳で、いい技術を持っている会社が、最初から日本国内だけでやろうとしているのは、勿体ない…。
加藤:日本に来た、海外の技術者が「日本はこういうサービスがあるのか。」というのを見て…、それで…。
江副:そう、自分の国に帰って、真似してやって、成功しちゃったりしていますよね。(笑)
何で、その技術に素人で、少なくとも開発した本人よりも後発で、ビジネスアイデアだけ自国へ持って帰って、うまくいっているのに、日本のベンチャー企業が、海外へ持っていかなかったことが、不思議で仕方ない。外国恐怖症なのかなと…。鎖国状態ですよね。
昔から日本企業で大きく育っていった企業で今も残っている大きい会社は、会社設立後、すごく早い時期で、海外に出ていっていますよね。SONYにしても、松下にしても。そういう会社は、良い会社になって残っている。それを早い時期にやらなかった会社は、淘汰されたんでしょうか。