「Openness」と「Tolerance for Failure」
- 2010年07月5日
- Interview
石井:時間もちょっとあんまりなくなってきましたね。
加藤:シリコンバレーの力を日本とつなげていくときに、多分石井さんがさっきおっしゃったように「日本の人は、やっぱりシリコンバレーに来てもらったほうが早い」っていうところがあるじゃないですか。
やっぱり日本では、シリコンバレーと同じものを作れないっていうのは、どういう理由かというところ。一方で、日本人はシリコンバレーの力どういうふうに活用したらいいか、この点は、多分イスラエルという観点でも本質は同じ答えにはなってくると思っていまして…。
石井:それは、非常に深いところでのインフラですね。というか、文化ですね。
2つのキーワードがあると思うんですよ。
シリコンバレーって「ベンチャーキャピタルがいっぱいいる」「起業家がいっぱいいる、」「いい大学がいっぱいある」そういう話はもちろんあります。ただ、そのもっとベースにある「オープンネス ( Openness )」というのが一つですね。
その「オープンネス」には、2つ意味があって、文化的な背景を持った人に対する「オープネス」どんな人でも受け入れる、どんなバックグラウンドの人も受け入れる。同じように付き合うと。
それともう一つは、いろんな新しいアイデアに対する「オープネス」ですね。日本なら、「こんなアイデア」「奇抜なアイデア」と思うかもしれない。それを思うまではやるかもしれないけど、それを実践するとか、そこまではいかない。それやっぱり、それどんどん実践しちゃう。
加藤:なるほど
石井:そういうアイデアに対しての「オープネス」。
アウトオブザボックスシンキング(=Out-of-the-box thinking」(俗に言う、「既成概念にとらわれないで考える」「独創的に発想する」「柔軟に物事を考える」) というのがありますよね。だから「オープネス」っていうのがひとつのキーワード。
加藤:うん、うん。
石井:もう一つのキーワードは、英語で言えば、「 Tolerance for Failure 」要するに、失敗に対する寛容。
加藤:日本は失敗できないですよね(笑)。
石井:そう。
やり直しがきくっていうことね。この2つがねやっぱり非常にキーだと思いますね。シリコンバレーは、この2つが、一番根底にあるんじゃないかな。一方で、「じゃあそれを日本へ植えつけよう」というのは、これは非常に難しいですね。
たとえば、日本人、あるいは日本の会社がシリコンバレーに来たときに否応なくそういう文化的な背景、インフラに、ぶちこまれるとします。そうすると、彼らの行動もね、自ずからシリコンバレー風になってくるでしょう。
加藤:そこにいけば、当然、徐々に変えていくしかないというか。
石井:一方、日本国内でシリコンバレーみたいなことをやろうとしたら、別の仕組みを考えなきゃいけないですね。大きな会社にいてもそんな頑張って勤続年数が増えただけでは給料が別によくなんないよ、とか、逆に年金なんかは、会社を変わっても続いていきますよとか。
加藤:企業内で会社を作る制度を採用した会社は特例で税金を免除されますよとか。
石井:いろいろね。
加藤:そういうとこですよね。
石井:そうそう。
そういう、だから、「リスク リウォード プロファイル(=Risk Reword Profile )」というのがですね、年齢で追って見ると、ちょうど起業しなければならない年の頃に、日本は、それをディスカレッジするようなシステムになっているんですよ。
だから失敗がなかなか許されない。リスクが高い。そういうのを変えるようなシステムにしないといけないと思いますね。そうすると、いろいろ新しくチャレンジするんじゃないですかね。
加藤:時間も少なくなってきましたので、静岡大学の大学院の教授を、2005年ぐらいから引き受けられた経緯を簡単にお聞かせ願いたいんですが。
石井:ああ、それはね、19日のお茶大の司会されていたY先生。彼が昔からの友達でして、やっぱり静大にですね、アメリカのシリコンバレーの様子を、いろいろ吹き込みたい。
そこで、ベンチャー企業論というか、事業開発マネジメント専攻科ができたんですね。その私はベンチャーキャピタルもやっているので、工学部の大学院の学生に事業、起業を教えると。
私、まあシリコンバレーをベースにしていて、現地のベンチャー企業とお付き合いがあるし、ベンチャーキャピタルもやっていますし、なのでまあ非常にグッドヒットだということだったんではないかと。
加藤:実際に学生と接していて、石井さんが感じる印象、その何というか、学生たちが十年後本当に起業するのかなとか、何か思うところはございますか。
石井:あのね、大学院の学生。3分の1は、東南アジアからの留学生です。彼らはね、ほんとにやる気がありますね。
加藤:それは、東南アジアでも優秀な人が来ているからですよね?
石井:「国に帰って起業したい」「今お父さんがこういう会社やっているけど、もっと盛り上げたい」とか、具体的な目標を持って来ている人がほとんどですよね。やる気がすごく多い。
もう3分の1、日本人の学生は、何となくやっている。だからグループつくって、ケーススタディなんかやる場合でも、日本人の学生が「はい、私がリーダーやります」っていうのは、少ないですね。むしろ、東南アジアからの留学生が一番多い。
加藤:「自分の近くの大学に行ったところが、たまたまそういう大学だった」って感じですよね。
石井:そうそう。それもありますね。ただ残りの3分の1、社会人。日本人でも、そういう人たちは意識が違う。
日本人で、去年今年とですね。女性でしかも五十何歳の人が、2人くらい来ましたね。それから、長野県あたりからも、「自分で会社作ったんだけどうまくいかなくて、もう一回やり直しで勉強したい」と、そういう人たちいます。
だから、一番がっくりくるは、何かそのまま上がってきた若い人たち、ですね。
加藤:私が言うのもなんですが、そういう若い人たちにこそ、頑張ってほしいですね。
石井:そうですね、若い人たちには期待しています。
加藤:本日は、ありがとうございました。